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ただ、想う。

白亜の屋敷の前に、ひとつの影。
黄昏色のそれを見て、彼女は駆け寄った。
優しい笑顔でそれを見つめ、彼女はそれに告げる。


「いらっしゃい、ペコ君」



それは、どこか悲しげに笑った。
「お久しぶりです、エリーゼさん」
「ペコ君こそ元気だった?……あら?テト君は?」
「ルーイと晩ご飯の買い出しに。……エリーゼさんこそ、お元気そうで」

笑った少年に、エリーゼと呼ばれた女性は笑みを返した。
彼女はこの少年が大好きだ。
彼女は母が援助していると言うことと、
彼に年の少し離れた兄がいること、
自分を好いてくれていることはよく知っていた。
ただ、それ以外は深く語ろうとはしない。
まるで話すことを罪だと思っているのか、少年はそれ以外のことを聞くと口を噤む。
とはいえ、今ではそんなことは関係ない。
ただエリーゼはこの少年と共に過ごす時間が好きだった。


「そうだ、今年も美味しいジュースが出来たのよ。飲んでみる?」
「うん、ぜひいただくよ。……いつもありがとう」


悲しげに笑う少年の瞳を見る。何故こんな笑顔を作るのかは分からない。
ただ、その深い藍色の瞳は自分と似ている気がした。
だからこそだろうか、こんなにもこの少年が気になった。
だからこそか、エリーゼはいつの日も少年を温かく迎えた。
何故だろうか、どうしてもこの少年が自分にとってかけがえのないものだと思えた。
エリーゼは彼の手を引き、屋敷の中へと消えていった。



「…………ただいま、母さん」
少年のつぶやきは、誰にも聞こえなかった。






※エリーゼ
 本名エリーゼ・フォン・クロイツ。テトとペコの母親だが、その記憶を持ち合わせてはいない。
 ある事件をきっかけに記憶が混濁し、子供のことを忘れ、「最も幸せだった時間」の自分を生きている。
 ペコとテトは自分たちが彼女の子供であることを隠しつつ、彼女に接している。
 久し振りに過去のネタばれSS。
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テーマ : Silver Rain
ジャンル : オンラインゲーム

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背後「影」

Author:背後「影」
最近いろいろと忙しくなってきていて体力的には死にそうなんだが、精神的にはネタが溢れてどうしよう的な感じの存在。絵描きで字書き。だが遅筆。


1st 黒羽・闇(b20433)
2nd 鎖山・テト(b20546)
3rd 鎖山・ペコ(b26657)
4th ルートビッヒ・オルフォイス(b35264)
5th 白河・月(b40042)
6th 榧口・銹(b42822)
??? 九十九尾・宮呼(b60704)




リンクは今のトコシルバーレインをやってる方に限りフリーです。

ブログ内のイラストの内、背後の影が書いたものと記述してあるもの以外の作品は、トミーウォーカー(株)のPBW『シルバーレイン』用のイラストとして、上記7人が作成を依頼したものです。イラストの使用権は上記6人に、著作権は登録絵師様方に、全ての権利はトミーウォーカー(株)が所有します。

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