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年末、帰路にて。

真冬の日差しは弱弱しくも、冷たく吹き付ける北風を温かく和らげていた。
銹はいつもの着物姿で一人……否、一人と一匹で田舎の一本道を歩いていた。
左右にはビニールハウスと味気のない畑、ちらほらと見える農家のおじちゃんおばちゃんの姿。
この寒い中でも懸命に働く農家の皆皆。ああ、彼らのおかげで美味しい食事にありつけるのか。
そんなことを考えながらゆったりと歩くその足取りは普段よりは軽やか。どこか楽しそうだった。

(もうじき、だな。)

肩で項垂れている白狐の頭を撫でながら少し大股に歩を進める。
竹林に差し掛かると自然と目が輝き、心も躍ってきた。
この林を抜けると、そこに待っているもの。
そのためだけに銹は長い道のりを歩んできたのだった。

と、遠くに人影が見える。
竹林の、少し開けた道の先。そこに此方を見て待っている誰かがいる。
その姿を確認すると、銹は走った。
「脩!おさむ!」
「ん……?シュウ、か?」

名を呼ばれその人影――榧口・脩は自分に駆け寄る少年に気がついた。
最後に会った時から比べると、彼はずいぶんと大きくなっていた。
一瞬誰かわからなかったが嬉しそうに駆け寄ってくる彼の姿を見て銹であることを理解。
飛び付き、抱きついてきた銹をがっちりと受け止めてやった。

「……?どうしたのだ?我の顔を忘れたのか?」
「ああ、いや……ずいぶん大きくなったと思ってな」
「そうであったか……なんといっても、我、成長期だからな!これからもぐんぐん伸びるぞ!」

普段、他の誰にも見せないような満面の笑みで、銹は脩に話し続ける。
雨の夜に拾われ、自分を育ててくれた彼を銹は自身の父として認識していた。
また脩も、蜘蛛童だった時から銹を我が子のように育ててくれていた。
黒羽家に引き取られるまでの短い期間ではあったが、それでも銹は脩を心から慕っている。
背は伸びたもののまだまだ子供。実質生まれて3年程度しかたっていないのだから、
銹はまだ親の愛情というものを必要以上に欲していたのかもしれない。
埋め合わせるようにぐりぐりと脩の胸に頭を押し付ける姿は懐ききった犬のようだった。
と、

「おーい、榧口ィ。暇だ、一局打とうじゃねぇか」

聴きなれない声がした。少なくとも去年の帰省では聴いていない声だ。
脩の肩越しに見遣ると、そこにはこの寒い中甚平姿で素足に草履という奇妙な井出達の男が立っていた。
白髪交じりの黒髪に黒い眼をした初老の男性、年は脩よりも上だろうか。
銹がじっと不思議そうに見つめているとその男はおぉ、と小さく声を漏らす。

「……なんでぃ、お前その年でこんな若くて可愛いコに手ぇ出してたのか。やるねェ」
「うちの息子だボケ老人。東の方の学校に出てってんだが里帰りだな」
「ボケてなんざいねぇよ、紛らわしいてめぇがワリィんだ……ほぉ、別嬪さんだな」
「だから男だっつってんだろうがええ加減にせんといっぺんしばくぞワレ」
「ええ根性しとるじゃないか。かかってこいや」

売り言葉に買い言葉、まさしく言葉の通りの光景が瞬く間に広がった。
不機嫌そうに眉をしかめる脩と意気揚々と戦闘態勢に入る老人。
そして目を丸くして状況把握に悩む銹。展開の速さについていけなくなり、肩の狐も震えていた。
そこに静かな声が追加した。

「じっちゃん、そのへんでやめときぃ」

声を聞いて老人がぴくりと動く。家から出てきたのはやけに白い青年だった。
とにかく白い。着ているものこそ黒いものの、髪も肌も人並み外れて白かった。
あちらこちらに血のにじんだ包帯が巻かれ、しかし決して病人ではなさそうな雰囲気。
銹はぼんやりと青年を見つめていると、老人は青年の方を見て嫌そうな声で返した。

「キョウか?んだよ、今いいところなんじゃねぇか」
「そっちの子が困った顔しとるけ。ほれ、もうやめぇ」

ちっと舌打ちをして老人は構えを解いた。脩も彼の姿を見て放っていた気を鎮める。
銹が呆気にとられていると、青年はひょこひょこと銹の前にやって来た。
目の前に立たれてようやく自分よりも背が高いほどに気付く。
やや見上げた銹に対し、青年はやんわりと笑みを浮かべて視線を合わせる。

「ごめんね?じっちゃん、血の気が多い人だから」
「む、気にするでない。しかし我と年が近い客人は珍しいな」
「そう?……そうだなぁ、おれも」

ぽやっと笑顔を浮かべる青年にすっかり心を許したのか、銹はいつもの調子を取り戻す。
青年もそれは同じらしく、嬉しそうに銹の頭をうりうりと撫でてきた。
まるで仲の良い兄弟のような光景に、すっかり外野になった老人が茶々を入れる。

「おぅおぅ、キョウ。出会い頭にナンパかぁ?」
「そげな事言うけ脩さん怒るんよ?じっちゃん」
「良く出来た孫だな。爪の垢煎じて飲め」

バチリと火花が散る。が、すぐに互いが視線をそらした。
仲がいいのか悪いのか、奇妙だが息の合っていると銹は思う。
その様子を見て青年は苦笑。銹の頭を撫でるのをやめて、老人の隣に並んだ。
こほんと咳を一回、そののちに脩が喋りだす。

「とりあえず遅くなったが紹介しとくぞ。こっちのジジィが止水っつーんだ」
「ほぉ、止水翁か。我は銹という。以後お見知りおきを」
「お前ん所のこそ出来た息子じゃねぇか。爪の垢煎じて飲め」

火花がまた散る。
だが「もういい加減にしてほしい」というオーラの青年を考慮してか、
二人揃って引きつった笑みを張り付けたまま次へと進む。

「で、こっちがジジィに似ても似つかない孫の」

ははは、と苦笑した後、青年は微笑った。

「花月・鏡。よろしくね?」







※ 銹は脩さん大好きです。一時は使役されてたので本当はご主人様ですが、
  銹にとっては自分を育ててくれた大事な家族なのです。
  故に、普段よりも若干感情表現豊か。ついでにでれっでれです。
  今回登場の二人に関しては……まあ、わかるひとにはわかりますか。
  分からない人はいつか分かると思うよ!
  ちなみに場所なんですが広島です。背後広島出身なんで。
  喧嘩の時の方言が楽しくて楽しくて仕方がありません。
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テーマ : Silver Rain
ジャンル : オンラインゲーム

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プロフィール

背後「影」

Author:背後「影」
最近いろいろと忙しくなってきていて体力的には死にそうなんだが、精神的にはネタが溢れてどうしよう的な感じの存在。絵描きで字書き。だが遅筆。


1st 黒羽・闇(b20433)
2nd 鎖山・テト(b20546)
3rd 鎖山・ペコ(b26657)
4th ルートビッヒ・オルフォイス(b35264)
5th 白河・月(b40042)
6th 榧口・銹(b42822)
??? 九十九尾・宮呼(b60704)




リンクは今のトコシルバーレインをやってる方に限りフリーです。

ブログ内のイラストの内、背後の影が書いたものと記述してあるもの以外の作品は、トミーウォーカー(株)のPBW『シルバーレイン』用のイラストとして、上記7人が作成を依頼したものです。イラストの使用権は上記6人に、著作権は登録絵師様方に、全ての権利はトミーウォーカー(株)が所有します。

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