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【思い出語り】梔子の夢

九十九尾・宮呼という人間は存在しない。
九十九尾という名は主たる銹様に与えられた名だ。私の中では本当の名は別にある。
また、宮呼という名も父方の家に伝わる名であり、本来の漢字は「宮狐」だ。
だからこそ、ここにツヅラオ・ミヤコは存在しない。

――これは昔、我がまだ「私」だった頃の、忘れてしまいたいほど愛している過去。

私の名は、幼い頃より定まってはいなかった。
誰からも名を呼ばれることなく過ごしていた私を、家にいる他の人間達は「化け物」と呼んだ。
何故私を化け物と呼ぶかというと、それは私の出生にかかわる。
私は人の子であり、化け狐の子だ。
ヒトと妖怪、人と獣という本来相容れぬモノ同士の間に生まれた私は、
生まれついて強い神通力を身につけており、生まれつき呪われていた。
生まれた時から本来人間にはついているはずのない狐の尾と耳が生えていて、
半月ほどで言葉を理解し、自分の足で歩けた私は、普通の人間にとってはただの化け物だったのだ。
そんな私を唯一愛してくれたのが母だった。
家の人間にどんなに蔑まれようと、母だけは私の味方だった。
「姫、私の可愛い姫」「お前は良い子よ」と頭を撫でてくれていた。
母は父のいない悲しさを私で埋めているようだった。
そしてやはり、母も私の名を呼んではくれなかった。

いつしかそんな生活がいやになった。
別に化け物と呼ばれることも、良い子と甘やかされることも嫌いじゃない。
ただ、退屈だった。
毎日のように繰り返す修行も、いつかどこかに嫁に出されるためにと習わされたお茶やお箏も、
経文のように繰り返すだけで意味があるようには思えなかった。
私は十を超えると家を出た。
その時は何も考えていなかった。
生活するのに金と呼ばれるものが必要だとか、
食事を取るために材料を獲らねばならぬだとか、
私は一切知らなかった。
故に私は家を出てよかったと痛感する。
私は本来知りえないことを知ることができた。
いつまでも家の連中に見下されながらお嬢様でいるのに比べてこの生活の楽しい事。
私は森を山を駆け、日々命がけで生活することの楽しさに酔っていた。
また私は他の妖怪どもを倒し、喰らうことで他の妖気を得る術を身に付けた。
奪った妖気を弱った他の妖怪や霊、力の弱い土地神などに分け与える術も知った。
その頃の私はまさしく化け物と呼ばれても違和感などなかっただろう。
耳を隠す必要もなかったし、尾は妖気を得るに従い大きくなり、分かれていった。
いつしか私は人間から「尾裂き狐」と、妖怪からは「半端物」と呼ばれるようになっていた。

ある日の事だった。

私は気紛れに女郎屋に忍び込んだ。
その時の私は人間では齢五十を超えた婆であったが、見た目はまだうら若い娘だった。
人を餌にする妖怪共は人の欲に惹かれて集まる。
女郎屋には多くの欲や思念が集まりやすかった。私はそこを暫くの餌場とすることにした。
予想通りに多くの欲が集まり、多少なれど妖怪共も集まった。私は片っ端からそいつらを倒し妖気を奪った。
そんな日々の中で私は一人の男とであった。
妙な男だった。男のくせに店の女たちよりも艶めかしい色気を持っていた。
私は気味が悪いと思いながらも、指名されてしまったが故に仕方なく男を部屋へと招き入れた。
男は私に酒を注がせ、暫くの間他愛もない外の話をしたかと思うとすぐにふらりと部屋を出ていった。
なんだあの男は。私は腹を立て、他の部屋を餌に集まった妖怪共でも喰らってやろうかと思った。
と、
ふと先ほど部屋を出ていった男の姿が目に映った。他の女郎の部屋に入っていく。
あの男、私を選んで置きながら他の娘にも手を出すのか。無性に腹が立って私は男と同じ部屋に入った。
しかし、目の前の光景は想像とは違ったものだった。
部屋に入った瞬間に感じたのは強力な結界、そしてそれを踏み越えていったという感覚。
目の前にいたのは男と、その部屋の女郎、そして鳥の体をもった女の妖怪だった。
男が私に気付く。「どうやってここに」という顔で私を見たがすぐに妖怪に向き直った。
私はこの時、ようやくこの男がどういう存在なのかを知った。
札を構え、敵を滅し、斬り祓う。男は俗にいう退魔師や修験者の類の人間だった。
狭いはずの部屋が妙に広い。どうやらこれは妖怪の仕業のようだ。
私はこれも何かの縁かと、男に力を貸してやることにした。
どうせこの妖怪も、私の餌となるべくしてこの場に呼ばれたのだ。ならば手っ取り早く終わらせて喰らいたい。
私の妖気を少しばかり貸してやると、男はあっという間に妖怪を持っていた宝剣で切り伏せた。
その時少しばかり狐の耳と尾が出てしまったが、男はそれを気にしないようだった。
私は事情を簡単に話すと倒された妖怪の、かすかに残っていた思念を喰い、部屋を後にしようとした。

「……梔子」
「は?」

男が突然花の名を言ったものだから、一体何があったのかと思い振り返る。
男ははっと我に返ったかのような顔で私を見ていた。
そして私の方に歩み寄ると、頬に手を添え、じっと見つめてくる。

「すまない、あんたの名は?」
「悪いが名はない」
「なら名乗ればいい。梔子だ、あんたは今日から梔子と名乗れ」

自分勝手な男だ。また私は勝手に名をつけられた。
だが、妙にうれしかったのを覚えている。恐らくこれは、初めて私個人を指してつけられた名だった。
男は私に旅に同行しろと言ってきた。私は男についていくことにした。名を貰った礼、というのもあった。
それから私は男と共に旅をした。各地で妖怪を倒し、楽器を奏でたり薬を売ったりして過ごした。
あまりにも平々凡々で、退屈な事ばかりだったが、何故か心は満たされていた。


思えばもうあれからかれこれ300年は経っている。
奴は当の昔に死に、どこに埋めてやったかも覚えていない。
奴がどんな顔をしていて、どんな名だったかさえ覚えていない。
それでも確実に覚えている事もある。
あの男は、私の長い人生において最も長い時間を共に過ごした「人間」であったこと。
私にとって相棒とも心の拠り所とも主人とも呼べる存在であったこと。
共に過ごした日々がとても大切であったことも覚えている。(内容は忘れてしまったたが)
だからこそ、私はいつまでもあの男の事を忘れはしない。
あの男が与えてくれた名を未練がましくいつまでも自分の名なのだと思い込んでいる。
だが、ツヅラオ・ミヤコに慣れ切ってしまった今更、
他の誰かに「私の名は梔子だ」と言っても困惑するだけだろう。
仕方ないから、この名は私の中だけに封じておくことにしよう。


――嗚呼、人生の儚き事、果敢無き事。
何れ、全て忘れてしまうだろう事ほど愛おしいとは。
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最近いろいろと忙しくなってきていて体力的には死にそうなんだが、精神的にはネタが溢れてどうしよう的な感じの存在。絵描きで字書き。だが遅筆。


1st 黒羽・闇(b20433)
2nd 鎖山・テト(b20546)
3rd 鎖山・ペコ(b26657)
4th ルートビッヒ・オルフォイス(b35264)
5th 白河・月(b40042)
6th 榧口・銹(b42822)
??? 九十九尾・宮呼(b60704)




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